「できないこと」を頑張るマインド
こんにちは。レボ体操教室の大川先生です。
今日のお話は「できないこと」に積極的に取り組むための気持ちの作り方。
現状維持から抜け出そう
器械体操に限らず、スポーツっていうのは(いや人生とは)、今の自分にできないことをできるようにすること以外に「成長」だったり「達成感」であったり、「自己肯定感」を味わうことは難しい。つまり現状維持こそ最もモチベーションを下げる要因である。
これは結果論かもしれないけど、成長を実感できないとやる気が無くなり、挑戦する意欲が沸かず、一向に成長しないという負のサイクルにはまってしまう。子供のころにこのサイクルにはまったら、大人になっても挑戦する勇気を持てず、自分の意見を主張することができない。
正直に言うと、習い事の先生たちが一番嫌がる考えは「いまのままでいい」「頑張りたくない」「挑戦したくない」という気持ち。逆を言えば、生徒をこんな気持ちにさせようものなら指導者失格と言える。さらに言えば、そんな気持ちの生徒をやる気にさせてこそ、本物の指導者だろう。
ではどうすれば子供が「できないこと」に向き合い、努力と成長に繋げることができるのだろうか?
他人と比べてもいい
子供は自分が「できること」に対して強い自尊心を持っている。ただしこれは多くの場合、他人と比較して生まれる感情であることを頭に入れておかなければならない。
例えば5人の集団の中で、A君1人だけが逆上がりができるとしたら、A君にとってそれは特別なスキルになる。
一方で5人全員が逆上がりを成功させる集団において、A君にとって逆上がりができることは特別なスキルというより「みんなできて当然」という感覚に近いはずだ。
では、5人のうちA君以外の全員が逆上がりができる場合はどうだろう?A君にとって自分だけできないという劣等感はとても大きく、多かれ少なかれその状況に抵抗を感じることだろう。
このように子供たちは常に周囲と比較しながら自己評価を繰り返し、「できること」に積極的に取り組み、「できなこと」へは消極的になりがちである。
ここで大切なのは、良い点と改めるべき点をちゃんと理解することだ。
できることへの自尊心、他人との比較、事実の把握(できないことの自覚)、これらは全部大切なことであり自然なこと、決して否定してはならない。人と比べたってぜんぜんOK!ただ問題なのは、「できない自分はダメなんだ」と自分を否定すること。ここを子供にしっかり教えてあげることが、指導者の課題だと思う。
失敗は良いこと
シンプルに子供は「成功」が良いことであり、「失敗」は悪いことだという認識がある。これは子供に限らず親、指導者とて囚われがちな感覚である。
子供はただでさえできないという事実に対して「できない自分はダメなんだ」という気持ちになるのに、親が「周りの子はできているのに、なんであなたはできないの?」なんて言ったら心の傷をグリグリえぐることになってしまう。特に指導者が「お前はいつになったらできるようになるんだ?」なんて言うのは悪の極みだ。できないことに悩む生徒に対して更に時期という条件を加えることにより、「普通の子はもっと早くできるようになるのに、本当に私はダメなんだ」という気持ちにさせてしまうからである。
大切なのは失敗に対するマイナスイメージをなくすことだ。とはいえ子供自身が自分の失敗を前向きに捉えるのは難しいこと。だからこそ近くで見ている親、指導者が失敗を認めてあげなくてはならない。とにかく子供たちに伝えるべきは「失敗はいいこと」という考えだ。
失敗無くして成功無しとはまさにそうで、失敗という過程の先に成功があるという大原則を子供にも理解できるように説明したいと思う。
「着地を止める」というのが目的だとする。
【1回目】
前に大きく動いちゃった。
→前に行き過ぎないようにしなきゃ
【2回目】
まだ前に動いちゃう。
→もっと後ろに体重をかけてみよう
【3回目】
今度は後ろに動いちゃった。
→動いちゃったけど、だんだんわかってきたぞ
【4回目】
あらら、手をついちゃった。
→手はついちゃったけど、今ので足の力が入っていれば...
【5回目】
ようやく止めることができた!
どうだろう。
2回目の失敗はしない方が良かった?4回目に手をついてしまったことは悪いこと?
決してそんなことはない、どの失敗も成功するために必要な動きを知るためのとても大切な経験だったはずだ。
何ならもっと失敗してもいい。横に動いちゃったり、足を開きすぎちゃったり、時には尻もちをついちゃって全然OK!いっそのこと全パターン失敗し尽くせばいい。
1000回の失敗から学んだ1回の成功は、やったらできちゃった1回目の成功より何千倍も価値あるものなのだから。
できないからこそ面白い
「体操って何が楽しいの?」と聞かれたら、「できない技をできるようにするのが楽しい」と多くの子供たちが答える。僕も同感だ。
特に習い事としての体操は、できないことに挑み続けるスポーツだと言える。もちろんできる技を組み合わせて演技を作ったり、大会で披露する緊張感を味わってこそ体操の醍醐味だという人もいるだろう。しかし日々の練習において圧倒的な割合を占めるのは、やはりできないことへの挑戦なのだ。鉄棒の代名詞逆上がり、跳び箱の転回跳び、憧れのバク転や倒立...。何度も何度も挑んでは失敗し、経験を積んで、知識を蓄え、力を得た時、ようやく1回の成功を掴み取る。この瞬間の幸福感、達成感は多くの失敗無くしては決して味わえない。
「成功」に価値があるわけではない、できないことに向き合い、失敗を繰り返し、成長を続けた先にある成功を掴み取るまでの「過程」にこそ価値があるのだ。
誰もが「最初からできていれば」「もっと楽にできれば」と考えるが、そんなにつまらなくていいの?と本気で思う。
魔王を倒せる最強装備をバッキバキに揃えて、意気揚々とはじまりの村を旅立ち、スライムたちを一網打尽にする旅のどこに面白さがあるというのか。
RPGは主人公が弱いからこそ面白いのだ。今のままじゃ目の前のこいつを倒せないから、強い装備を手に入れて挑む。それでも返り討ちに合うからもっと強くなってからまた挑む。戦ううちに敵の攻撃パターンが分かってきてやっと勝てた!次に戦う時はもう負けないぜ!これがRPGの面白さだ。
ゲームで例えたが体操も同じ。
できない状態だからこそ、頑張る意味が生まれる。「今どうなってたんだろう?」「何が足りないのかな?」「次はこれを試してみよう」「これが原因だったのか!」
そしてリアルではゲームとは比べ物にならないほど多くの失敗パターンがあり、同じように成功パターン(攻略方法)も人の数だけ存在する。だから練習していて楽しいんだ。
失敗してませんけど
ここまでの話をまとめようと思う。
現状維持はつまらない。「今のままでいいや」という感情から抜け出そう。
他人と比べても全然OK。ただし「あの子に比べて自分はダメだ」と思うのは間違い。
失敗はいいこと。失敗があるから成功に価値が生まれる。
できない状況を楽しもう。みんな最初は弱いから頑張る意味がある。
これを読んだ人が、諦めかけていた物事に挑戦する気持ちになったり、 夢や野望に向かって今まで以上に努力できることを願っている。
今回はできないことを頑張るマインドづくりというテーマだったが、ここまで聞いてもまだ「失敗」という言葉にマイナスイメージを抱いてしまう人がいるかもしれない。
そんな人は、トーマス・エジソンの言葉を心に刻むと良い。
「私は失敗したことがない。ただ1万通りの、うまくいかない方法を見つけただけだ。」
あなたもエジソンのように強気な考えを持てば、目的のために失敗することを恐れず、どんな逆風にも動じず、高い壁にも果敢に挑戦できるだろう。